ショッピングセンターに不足しやすいテナント業種10選|テナントミックスの考え方

ショッピングセンターの基礎知識

ショッピングセンター(SC)のテナント構成を考えるとき、「人気のテナントを誘致する」ことだけが正解ではありません。

重要なのは、商圏のお客様が求めているにもかかわらず、SCに不足している業種・業態を見つけることです。

特に、食品スーパーやドラッグストア、ファッション、飲食などは比較的出店候補が見つかりやすい一方で、医療、教育、サービス、キッズ、専門性の高い業種などは、SCによって不足しやすい傾向があります。

こうした不足業種を補完することで、

  • 来館頻度を高める
  • 新しい客層を取り込む
  • 館内回遊を増やす
  • 滞在時間を伸ばす
  • SC全体の売上を高める
  • 競合SCとの差別化を図る

といった効果が期待できます。

この記事では、ショッピングセンターに不足しやすいテナント業種10選を紹介し、テナントミックスを考える際のポイントについて解説します。


ショッピングセンターに不足しやすいテナントとは?

まず重要なのは、「不足している=店舗数が少ない」という意味ではないことです。

SCのテナント構成では、単純な店舗数ではなく、

商圏の需要に対して、必要な機能が不足しているか

という視点で判断する必要があります。

例えば、ファッション店舗が10店舗あるSCでも、子育て世帯が多い商圏でキッズ関連店舗が1店舗しかなければ、キッズカテゴリーが不足している可能性があります。

つまり、

「店舗数が少ない業種」ではなく、「お客様の需要に対して不足している業種」を探す

ことが重要です。


不足しやすいテナント業種10選

今回紹介するのは以下の10業種です。

順位 業種 主な役割
1 医療・クリニック 高頻度来館・生活支援
2 教育・学習 定期来館・ファミリー集客
3 キッズ・ベビー ファミリー集客
4 美容・リラクゼーション 女性集客・高頻度利用
5 生活サービス 利便性・来館頻度
6 ペット関連 専門集客・固定客化
7 スポーツ・フィットネス 高頻度来館
8 リユース・中古品 新たな客層の獲得
9 エンターテインメント 目的来館・滞在時間
10 地域密着型・専門店 差別化・地域性

ただし、すべてのSCに必要というわけではありません。

SCの立地、規模、商圏、ターゲットによって優先順位は変わります。


1.医療・クリニック

SCで不足しやすい代表的な業種の一つが、医療・クリニックです。

例えば、

  • 内科
  • 小児科
  • 眼科
  • 耳鼻科
  • 歯科
  • 皮膚科
  • 整形外科
  • 婦人科

などがあります。

医療テナントの大きな特徴は、来館目的が明確で、定期的な利用が期待できることです。

特にファミリー世帯が多い商圏では、小児科や歯科などがSCに入ることで、子育て世帯の利用頻度を高められる可能性があります。

医療テナントのメリット

  • 高頻度来館につながる
  • 新たな客層を獲得できる
  • SCの生活利便性が高まる
  • 周辺住民にとって利用価値が高い
  • 他テナントへの回遊が期待できる

一方、診療時間や休診日、必要面積などの条件があるため、リーシングでは通常の物販テナントとは異なる考え方が必要です。


2.教育・学習

2つ目は、教育・学習関連です。

例えば、

  • 学習塾
  • 英会話
  • 幼児教室
  • プログラミング教室
  • 音楽教室
  • スポーツ教室

などです。

教育関連テナントの特徴は、週1回、週2回など定期的に来館する理由をつくれることです。

食品スーパーなどの日常利用テナントと組み合わせることで、

「子供を教室に送るついでに買い物をする」

といった相互利用も期待できます。

特に、子育て世帯の多い住宅地型SCでは検討価値の高いカテゴリーです。


3.キッズ・ベビー

ファミリー型SCで不足しやすいのが、キッズ・ベビー関連です。

例えば、

  • 子供服
  • ベビー用品
  • 玩具
  • 子供靴
  • 子供向け雑貨
  • キッズ向けサービス

などがあります。

子育て世帯が多いにもかかわらず、キッズカテゴリーが弱いSCでは、競合施設に顧客が流出している可能性があります。

また、キッズ関連店舗は、単純な物販だけでなく、

「子供を連れて行きやすいSC」

という施設イメージを形成する役割もあります。


4.美容・リラクゼーション

美容・リラクゼーションも不足しやすいカテゴリーです。

例えば、

  • 美容室
  • 理容室
  • ネイル
  • アイラッシュ
  • エステ
  • マッサージ
  • リラクゼーション

などがあります。

これらは物販店舗と異なり、サービスを受けるために来館する目的型テナントです。

また、定期的な利用が期待できるため、来館頻度向上にもつながります。

特に、

美容+飲食+物販+食品

のような組み合わせをつくると、滞在時間や館内回遊を高められる可能性があります。


5.生活サービス

意外と不足しやすいのが、生活関連サービスです。

例えば、

  • クリーニング
  • 鍵・靴修理
  • 写真
  • 宅配受付
  • スマートフォン関連
  • 保険相談
  • 不動産
  • 買取サービス

などです。

生活サービスは、大きな売上を生み出すテナントだけではありません。

しかし、

「わざわざSCに行く理由」

を増やすことができます。

例えば、

「買い物のついでにクリーニングを出す」

「食品を買うついでに保険相談をする」

といった複合利用が可能になります。


6.ペット関連

近年、検討余地が大きいカテゴリーの一つがペット関連です。

例えば、

  • ペットショップ
  • トリミング
  • ペットホテル
  • ペット用品
  • 動物病院
  • ペット関連サービス

などがあります。

ペット関連は、単純な物販だけでなく、サービス利用による定期来館を生み出せる点が特徴です。

また、ペットを飼っている世帯が多いエリアでは、SCの差別化要素にもなります。

ただし、施設のペット同伴ルールや衛生管理、動線設計などを考慮する必要があります。


7.スポーツ・フィットネス

スポーツ・フィットネスも、SCの来館頻度を高める可能性があります。

例えば、

  • フィットネスクラブ
  • 24時間ジム
  • ヨガ
  • ピラティス
  • スポーツスクール
  • 子供向けスポーツ教室

などです。

食品や物販店舗と比較すると、利用目的が明確で、定期的な来館につながりやすいことが特徴です。

特に、SCの営業時間外も営業する業態の場合、SC全体の時間価値を高める可能性があります。


8.リユース・中古品

近年注目したいのが、リユース・中古品関連です。

例えば、

  • 衣料品リユース
  • ブランド品買取
  • 玩具・ホビー
  • 本・ゲーム
  • 家具
  • 総合リユース

などがあります。

リユース業態は、

「買う」だけではなく「売る」目的でも来館する

という特徴があります。

そのため、通常の物販とは異なる来館動機をつくることができます。

特に、

  • 子育て世帯
  • ファミリー
  • 若年層
  • 節約志向の顧客

などをターゲットとするSCでは、テナントミックスの選択肢になり得ます。


9.エンターテインメント

SCに不足しやすい業種として、エンターテインメントも挙げられます。

例えば、

  • アミューズメント
  • ゲームセンター
  • カラオケ
  • 映画館
  • 屋内遊戯施設
  • イベント施設

などです。

エンターテインメント系テナントは、物販とは異なる**「目的来館」**をつくれることが強みです。

さらに、

「買い物をするSC」から「過ごすSC」へ

という施設価値の転換にもつながります。

ただし、必要面積が大きい業態も多く、賃料負担力や営業時間、騒音などを考慮したリーシングが必要です。


10.地域密着型・専門店

最後は、地域密着型・専門性の高い店舗です。

例えば、

  • 地元飲食店
  • 地域の特産品店
  • 地元企業のアンテナショップ
  • 専門性の高い趣味店
  • 地域サービス
  • 地域発のブランド

などです。

大手チェーンだけでテナントミックスを構成すると、競合SCとの差別化が難しくなる場合があります。

そこで、

「このSCにしかない店舗」

をつくることが重要になります。

地域密着型テナントは、売上規模だけでは評価しにくいものの、SCの個性をつくる役割を持ちます。


10業種を「SCに与える役割」で分類する

ここまで紹介した10業種を、SCにおける役割で整理すると分かりやすくなります。

業種 集客 来館頻度 回遊 滞在 差別化
医療・クリニック ○ ◎ ○ △ ○
教育・学習 ○ ◎ ○ △ ○
キッズ・ベビー ◎ ○ ◎ ○ ○
美容・リラク ○ ◎ ○ ○ ○
生活サービス ○ ◎ ○ △ △
ペット関連 ◎ ◎ ○ ○ ◎
スポーツ・フィットネス ◎ ◎ ○ ○ ○
リユース ◎ ○ ○ ○ ◎
エンタメ ◎ ○ ◎ ◎ ◎
地域・専門店 ◎ ○ ◎ ○ ◎

※評価は一般的な傾向であり、実際の効果は業態・立地・施設規模などによって異なります。

→ 日本のSCに今後増えるテナント業種10選


重要なのは「不足業種=誘致するべき業種」ではない

ここがテナントリーシングで非常に重要なポイントです。

SCに不足している業種を見つけたからといって、必ず誘致すればよいわけではありません。

例えば、商圏に子育て世帯が多くても、

「周辺に競合する大型キッズ施設がある」

「SCの規模に対して必要面積が大きすぎる」

「賃料条件が合わない」

といった問題があれば、出店効果は限定的になる可能性があります。

そのため、

不足度 × 需要 × 集客力 × SCとの適合度 × 採算性

で判断することが重要です。


リーシングマトリクスで不足業種を評価する

不足業種を具体的にリーシングにつなげるためには、リーシングマトリクスを活用すると便利です。

例えば、

  • 縦軸:商圏ニーズ
  • 横軸:SCとの適合度

として評価します。

SCとの適合度:低 SCとの適合度:高
商圏ニーズ:高 △ 条件を見直して検討 ◎ 最優先で誘致
商圏ニーズ:低 × 優先度低 ○ 差別化目的で検討

例えば、ファミリー世帯が多い商圏で、

「キッズ関連の需要が高い」

「現在のSCにはキッズ店舗が少ない」

「競合SCにも有力店舗が少ない」

という状況なら、キッズ関連テナントは優先順位が高くなります。

→ SCの商圏はどうやって決める?


テナントミックスは「業種数」ではなく「役割」で考える

SCのテナントミックスを考える際、単純に、

「ファッション10店舗」

「飲食15店舗」

という店舗数だけで判断するのは不十分です。

例えば、ファッション店舗が10店舗あっても、

  • 若年層向けが多い
  • ファミリー向けが少ない
  • キッズがない
  • シニア向けがない

のであれば、商圏ニーズに対して偏ったテナントミックスになっている可能性があります。

そのため、

「どの業種が何店舗あるか」

だけでなく、

「誰の、どんなニーズを満たしているか」

まで確認することが重要です。

→ SCのテナント構成はどう決める?


不足業種を発見する5つの方法

では、実際に自分のSCで不足業種を見つけるにはどうすればよいのでしょうか。

① 商圏分析

まずは商圏を分析します。

  • 人口
  • 世帯数
  • 年齢
  • 世帯構成
  • 所得
  • 住宅開発
  • 昼間人口
  • 競合施設

などを確認します。


② 顧客アンケート

「SCにあったら利用したい店舗」を直接聞く方法です。

例えば、

  • 医療
  • キッズ
  • 飲食
  • 美容
  • ペット
  • 教育
  • スポーツ

などの選択肢を用意します。


③ POS・購買データ

現在のテナント売上だけではなく、

「何を買っているお客様が、SC内で何を買えていないのか」

を見ることも重要です。


④ 競合SC比較

競合SCのテナント構成を比較します。

例えば、

カテゴリー 自SC 競合A 競合B
医療 0 2 1
キッズ 1 3 4
教育 1 2 1
ペット 0 1 2
フィットネス 0 1 1
リユース 0 1 1

このような比較をすると、自SCの不足カテゴリーが見えてきます。


⑤ 空床区画との適合性を見る

最後に重要なのが、区画との適合性です。

不足業種が分かっても、その業種に合う区画がなければ誘致できません。

例えば、

  • 大型区画 → フィットネス・エンタメ
  • 中型区画 → キッズ・教育・ペット
  • 小型区画 → 美容・サービス
  • 1階路面 → 医療・サービス
  • 上層階 → 教育・フィットネス

など、業態ごとの必要面積や立地条件を考慮する必要があります。


「不足業種」を見つけたら、テナントミックスを再設計する

不足業種の分析は、単なるリーシング候補のリスト作成ではありません。

最終的には、

商圏
↓
顧客ニーズ
↓
不足カテゴリー
↓
必要なテナント
↓
リーシング候補
↓
区画配置
↓
SC全体のテナントミックス

という流れで考えます。

このプロセスを踏むことで、「空いているから入れる」というリーシングから、「SCをより強くするために誘致する」というリーシングに変えることができます。

→ SCのテナントリーシングとは?


まとめ

ショッピングセンターに不足しやすいテナント業種として、今回は以下の10業種を紹介しました。

  1. 医療・クリニック
  2. 教育・学習
  3. キッズ・ベビー
  4. 美容・リラクゼーション
  5. 生活サービス
  6. ペット関連
  7. スポーツ・フィットネス
  8. リユース・中古品
  9. エンターテインメント
  10. 地域密着型・専門店

ただし、重要なのは「不足している業種を埋めること」ではありません。

SCごとに商圏やターゲットが異なるため、

「このSCのお客様に、今何が足りないのか?」

という視点で考える必要があります。

そのためには、

商圏分析 → 顧客ニーズ分析 → テナント構成分析 → 競合比較 → リーシングマトリクス → テナントミックス再設計

という流れで分析することが有効です。

最終的に目指すべきなのは、単に空床率を下げることではありません。

「不足している機能を補い、SC全体の集客力・来館頻度・回遊性・売上を高めるテナントミックスをつくること」

これが、SCリーシングにおける「不足業種」の考え方です。

→ 日本のSCに今後増えるテナント業種10選

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