ショッピングセンターに必要なテナント業種とは?基本的な考え方

ショッピングセンターの基礎知識

ショッピングセンターのリーシングを考えるうえで、「どのテナントを誘致するか」は非常に重要なテーマです。

しかし、テナントを選ぶ際に「人気のある業種だから」「売上が高そうだから」という理由だけで決めてしまうと、SC全体としての魅力や収益力を十分に高められないことがあります。

重要なのは、単純に店舗数を増やすことではありません。

商圏の顧客が求めている機能を満たし、来館頻度を高め、館内を回遊させ、SC全体の売上を高められるテナント構成をつくることが重要です。

日本ショッピングセンター協会によると、2025年末時点の国内SCは3,013施設、総テナント数は164,545店舗で、平均テナント数は55店舗となっています。また、業種別では物販が61.0%、飲食が18.2%、サービスが20.8%となっており、サービスの構成比は2020年の19.9%から上昇しています。

この記事では、ショッピングセンターに必要なテナント業種を考える際の基本的な考え方を、SC・商業施設のリーシング実務の視点から解説します。

出典:一般社団法人 日本ショッピングセンター協会「SC白書/全国のSC数・概況」

ショッピングセンターに必要なテナント業種とは?

「必要なテナント業種」とは、単純にSC内に存在していない業種という意味ではありません。

例えば、ファッションテナントが少ないSCだからといって、ファッション店舗を増やせばよいとは限りません。

商圏の顧客が求めているものが、

  • 日常的な買い物
  • 医療
  • 子育て
  • 飲食
  • 美容
  • フィットネス
  • エンターテインメント
  • 生活サービス

であれば、ファッションを増やすよりも、これらの機能を強化した方がSC全体の競争力を高められる可能性があります。

つまり、

「不足している業種」と「必要な業種」は違う

ということが重要です。

テナントミックスとは、商業施設のコンセプトや商圏特性に合わせて、テナントの業種・業態・配置などを最適化する考え方です。

したがって、必要なテナントを考えるときには、

商圏ニーズ → SCの役割 → 必要な来館目的 → 必要なテナント

という順番で考えることが基本になります。

まず「SCにどんな来館目的が必要か」を考える

テナント業種を考える前に、SCにどのような来館目的をつくりたいのかを考える必要があります。

例えば、

来館目的 必要になりやすいテナント
日常の買い物 食品スーパー、ドラッグストア、生活用品
ファッション アパレル、靴、服飾雑貨
食事 レストラン、カフェ、フードコート
子育て キッズ用品、子供服、学習、遊び
健康 クリニック、薬局、フィットネス
美容 美容室、理容室、エステ、リラクゼーション
生活サービス クリーニング、携帯、保険、修理
ペット ペットショップ、トリミング、動物病院
体験 アミューズメント、スポーツ、イベント
地域交流 地域産品、コミュニティ施設、行政サービス

このように考えると、「どの業種が必要か」ではなく、「どの来館目的が不足しているか」という視点でリーシングを考えられます。

必要なテナント業種を決める7つの視点

必要なテナント業種を判断する際には、主に7つの視点が重要です。

1.商圏ニーズ

最も重要なのが商圏分析です。

商圏内の人口だけではなく、

  • 年齢構成
  • 世帯構成
  • 子育て世帯
  • 高齢者
  • 単身世帯
  • 所得水準
  • 昼間人口
  • 夜間人口
  • 住宅開発
  • 将来人口

などを確認します。

例えば、ファミリー世帯が多い商圏なら、キッズ、教育、飲食、医療、子育て関連の需要が高くなる可能性があります。

一方、高齢者比率が高い地域では、医療、ドラッグストア、生活サービス、健康関連などの重要性が高まります。

2.SCの規模・業態

SCの規模によって必要なテナント構成も変わります。

例えば、NSCとRSCでは求められる役割が大きく異なります。

SCタイプ 主要な役割 必要になりやすい業種
NSC 日常生活支援 食品、ドラッグ、生活サービス、飲食
CSC 日常+週末需要 食品、ファッション、飲食、サービス、キッズ
RSC 広域集客・滞在 ファッション、飲食、エンタメ、キッズ、体験
都心型SC 都市型消費・目的来館 ファッション、飲食、美容、サービス、体験

したがって、同じ「ドラッグストア」でも、NSCでは核となる存在になり得る一方、RSCではSC全体のMDの中でどのような役割を持たせるかを考える必要があります。

3.来館頻度

テナントを「来館頻度」という視点で分類することも重要です。

例えば、

高頻度型

  • 食品スーパー
  • ドラッグストア
  • クリニック
  • フィットネス
  • 美容室
  • 生活サービス

中頻度型

  • 飲食
  • ファッション
  • 雑貨
  • ペット関連

低頻度・目的来館型

  • 大型エンターテインメント
  • アミューズメント
  • 大型専門店
  • アウトレット
  • 高単価専門店

SCとしては、目的来館型のテナントだけを集めるのではなく、高頻度型テナントを組み合わせることが重要です。

高頻度テナントによって日常的な来館を生み出し、その来館者を飲食や専門店、エンターテインメントへ回遊させることで、SC全体の利用価値を高めることができます。

4.集客力

テナントには、それぞれ異なる集客力があります。

例えば、地域で認知度の高い食品スーパーや大型専門店は、SCへの来館そのものを生み出す「集客テナント」になり得ます。

一方、クリーニングや修理などの生活サービスは、単独で広域集客する力は限定的でも、日常利用を支える重要な機能になります。

そのため、テナントを評価するときには、

「売上が高いか」だけではなく「SCへの来館を生み出すか」

を見る必要があります。

5.回遊性

テナント配置まで考えると、必要な業種の意味がさらに変わります。

例えば、食品スーパーだけが強くても、買い物を終えた顧客が他のエリアへ行かずに帰ってしまえば、SC全体への波及効果は限定的です。

そこで、

食品スーパー
↓
ドラッグストア
↓
生活雑貨
↓
飲食
↓
キッズ・エンタメ

というように、異なる来館目的を組み合わせることで回遊を生み出します。

つまり、必要なテナント業種は「店舗単体」ではなく、館内の顧客動線まで含めて考える必要があります。

6.競合SCとの差別化

競合SCにすでに強いテナントが揃っている場合、同じ構成を再現するだけでは差別化できません。

例えば競合SCが、

  • ファッションに強い
  • 飲食に強い
  • 大型キッズ施設を持っている
  • エンタメに強い

のであれば、自SCがどの領域で差別化するのかを考える必要があります。

そのため、

「競合にあるテナント」ではなく「競合と比べて自SCに足りない価値」

を見ることが重要です。

7.SCコンセプトとの適合性

最後に重要なのが、SCのコンセプトとの相性です。

例えば「地域の日常生活を支えるSC」であれば、

  • 食品
  • ドラッグ
  • 医療
  • 美容
  • 生活サービス

などが重要になります。

一方、「週末に家族で楽しめるSC」であれば、

  • キッズ
  • 飲食
  • スポーツ
  • エンターテインメント
  • 体験型専門店

などの重要性が高くなります。

つまり、

商圏ニーズとSCコンセプトが重なるところに、必要なテナントがある

と考えると分かりやすくなります。

テナント業種は「5つの役割」で考えると分かりやすい

実務では、業種だけでなくテナントの役割で分類すると、テナントミックスを考えやすくなります。

役割 主な目的 テナント例
核テナント SC全体の集客 食品スーパー、GMS、百貨店、大型専門店
集客テナント 広域から顧客を呼ぶ 大型専門店、エンタメ、人気ブランド
高頻度テナント 日常利用を増やす 食品、ドラッグ、クリニック、フィットネス
回遊テナント 館内回遊を生む 飲食、雑貨、ファッション、サービス
滞在・体験テナント 滞在時間を伸ばす キッズ、アミューズメント、スポーツ、カフェ

理想的なSCでは、これらの役割がバランスよく組み合わされています。

特に重要なのが、

「集客するテナント」と「頻繁に利用されるテナント」を組み合わせること

です。

「必要なテナント」をリーシングマトリクスで整理する

実際にテナント候補を選定する際には、リーシングマトリクスを活用すると判断しやすくなります。

基本的には、

横軸:商圏ニーズ

縦軸:SCとの適合度・集客力

などで整理します。

SCとの適合度 高 SCとの適合度 低
商圏ニーズ 高 最優先で誘致 条件を見ながら検討
商圏ニーズ 低 差別化目的で検討 優先度低

さらに実務では、

  • 集客力
  • 来館頻度
  • 売上期待
  • 面積効率
  • 賃料負担力
  • 競合との差別化
  • 他テナントとの相乗効果
  • 出店可能性

などを加えて評価すると、より精度の高いリーシング判断ができます。

「不足業種=誘致すべき業種」ではない

ここはSCリーシングで特に重要なポイントです。

例えば、SC内に美容室が1店舗しかなかったとしても、商圏内に美容室が過剰に存在しているなら、さらに美容室を増やす必要はありません。

逆に、SC内にクリニックが存在しなくても、周辺に競合施設が少なく、子育て世帯が多いのであれば、クリニックは非常に重要なテナントになる可能性があります。

つまり、

店舗数の不足ではなく、顧客ニーズに対する機能の不足を見る

ことが必要です。

この考え方を整理すると、

不足度 × 商圏需要 × 集客力 × SC適合度 × 採算性

で評価することができます。

SCの業種構成は「物販・飲食・サービス」のバランスだけでは不十分

日本ショッピングセンター協会の2025年データを見ると、SCテナントは物販61.0%、飲食18.2%、サービス20.8%という構成になっています。2020年と比較すると、物販の構成比が62.0%から61.0%へ低下する一方、サービスは19.9%から20.8%へ上昇しています。

この変化からも、SCにおけるサービス機能の重要性が高まっていることが読み取れます。

ただし、単純に「サービスを増やせばよい」ということではありません。

重要なのは、

物販+飲食+サービスを、SCの来館目的に合わせて組み合わせること

です。

例えば、

食品スーパー
+
ドラッグストア
+
クリニック
+
美容
+
飲食
+
キッズ

という構成であれば、「買い物」だけではなく「生活」の目的をSC内でまとめて満たすことができます。

これからのSCで重要になるテナント業種

今後のSCでは、従来型の物販だけではなく、生活・サービス・体験を提供するテナントの重要性がさらに高まると考えられます。

特に注目したいのは、

  1. 医療・クリニック
  2. キッズ・子育て
  3. フィットネス・スポーツ
  4. 美容・ウェルネス
  5. リユース
  6. ペット
  7. エンターテインメント
  8. 生活サービス
  9. 地域密着型専門店
  10. 高齢者向けサービス

です。

これらに共通しているのは、ECだけでは代替しにくいことです。

商品を購入するだけならECでもできますが、

  • 診察を受ける
  • 運動する
  • 子どもを遊ばせる
  • 美容サービスを受ける
  • ペットのケアをする
  • 人と交流する
  • 実際に体験する

といった行動は、リアルな施設でなければ成立しません。

そのため、これからのSCでは「ECと競合するテナント」だけでなく、リアル店舗だからこそ価値を提供できるテナントを組み込むことが重要になります。

必要なテナント業種を決める実務フロー

実際のSCリーシングでは、次の流れで考えると整理しやすくなります。

STEP1 商圏を分析する

人口、世帯、年齢、所得、住宅開発、競合施設などを確認します。

STEP2 顧客ニーズを分析する

来館者アンケート、購買データ、来館頻度、顧客属性などから、不足している来館目的を把握します。

STEP3 競合SCを分析する

競合施設のテナント構成、強み、弱み、集客テナントを比較します。

STEP4 SCのコンセプトを確認する

自SCが「日常型」なのか「広域集客型」なのか「ファミリー型」なのかなど、施設の役割を明確にします。

STEP5 必要なテナント業種を抽出する

「商圏ニーズ」「SCコンセプト」「競合との差別化」から必要な業種を絞り込みます。

STEP6 リーシングマトリクスで優先順位をつける

集客力、来館頻度、SC適合度、収益性などを評価し、誘致優先順位を決定します。

STEP7 テナントミックスとして配置する

最後に、単に店舗を集めるのではなく、

どこに配置すればSC全体の回遊・滞在・売上が最大化するか

まで考えます。

まとめ|必要なテナントは「業種」ではなく「SCの役割」から逆算する

ショッピングセンターに必要なテナント業種を考えるとき、最も重要なのは「今空いている業種は何か」ではありません。

重要なのは、

商圏の顧客にどのような来館目的を提供するのか

です。

そのため、

商圏分析
→ 顧客ニーズ
→ SCコンセプト
→ 必要な来館目的
→ 必要なテナント業種
→ リーシングマトリクス
→ テナントミックス
→ 配置・回遊

という順番で考えることが重要です。

SCにとって優れたテナントとは、単純に売上が高いテナントではありません。

「集客する」「頻繁に利用される」「回遊を生む」「滞在時間を伸ばす」「他テナントと相乗効果を生む」といった役割を持ち、SC全体の価値を高めるテナントです。

これからのSCリーシングでは、

「空いている区画に何を入れるか」から、「SCにどんな来館目的をつくるか」へ発想を変えること

が、テナントミックスを考えるうえで重要になるでしょう。

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