ショッピングセンター(SC)にとって、「集客力」は施設の売上やテナントの出店継続を左右する重要な要素です。
しかし、SCの集客力を高める方法は、単純にチラシや広告を増やすことだけではありません。
商圏人口が減少し、EC市場が拡大する中では、
- 新しい顧客を呼び込む
- 来館頻度を高める
- 館内を回遊してもらう
- 滞在時間を伸ばす
- 再来館につなげる
という複数の視点から集客力を考える必要があります。
経済産業省によると、2024年の国内BtoC-EC市場規模は26.1兆円、EC化率は9.8%まで拡大しています。物販だけで顧客を呼び込むことが難しくなる中、リアルなSCだからこそ提供できる「サービス・体験・交流」の価値がより重要になっています。
この記事では、ショッピングセンターの集客力を高める方法を、テナントミックス、イベント、飲食、キッズ、サービス、デジタルなど、SC運営・リーシングの実務的な視点から10個に整理します。
- ショッピングセンターの「集客力」とは?
- 方法1.核テナント・集客テナントを強化する
- 方法2.「日常利用」を増やして来館頻度を高める
- 方法3.キッズ・ファミリー向け施設を強化する
- 方法4.飲食・フードコートを強化する
- 方法5.体験型テナントを増やす
- 方法6.イベント・地域コミュニティ機能を強化する
- 方法7.SC独自の「ここにしかない店」をつくる
- 方法8.SC内の回遊性を高める
- 方法9.デジタルマーケティングを強化する
- 方法10.「来館する理由」を複数つくる
- ショッピングセンターの集客力を高める10の方法を比較
- 集客力を高めるために「やってはいけないこと」
- 集客力を高めるためのKPI
- まとめ|これからのSC集客は「来館理由を複線化する」ことが重要
ショッピングセンターの「集客力」とは?
まず、集客力を「来館者数」だけで考えないことが重要です。
SCの集客力は、大きく分けると次の5つの要素から考えることができます。
集客力=来館者数×来館頻度×回遊性×滞在時間×再来館率
もちろん、これは厳密な売上計算式ではありません。
SCの集客力を考えるための概念として、この5つを意識すると、どこを改善すべきかが見えやすくなります。
例えば、年間1,000万人が来館していても、ほとんどの顧客が年1回しか来なければ、日常利用型SCとしての集客力は高いとは言えません。
逆に、来館者数が突出していなくても、週に何度も利用され、館内を回遊し、飲食やサービスまで利用されているSCは、非常に強い集客力を持っています。
方法1.核テナント・集客テナントを強化する
SCの集客力を左右する最も重要な要素の一つが、テナント構成です。
特に重要なのが、
- 食品スーパー
- GMS
- 大型専門店
- 人気ブランド
- 大型スポーツ店
- 家電量販店
- エンターテインメント施設
などの「集客テナント」です。
ただし、集客力の高いテナントを入れればSC全体の集客力が高まるとは限りません。
重要なのは、
「そのテナントの顧客をSC全体に回遊させられるか」
です。
例えば大型食品スーパーを誘致した場合、食品だけ購入して帰る顧客が多ければ、SC全体への波及効果は限定的です。
そこで、
食品スーパー
↓
ドラッグストア
↓
生活雑貨
↓
飲食
↓
キッズ・エンターテインメント
というように、異なる目的のテナントを組み合わせることが重要になります。
つまり、集客テナント単体ではなく、集客テナントを中心としたテナントミックスを構築することがポイントです。
方法2.「日常利用」を増やして来館頻度を高める
集客力を高めるうえで、「年間来館者数」だけを追うのではなく、来館頻度を高めることも重要です。
例えば、
- 食品スーパー
- ドラッグストア
- クリニック
- 美容室
- フィットネス
- 生活サービス
- ペット関連
などは、日常的に利用されやすい業種です。
これらのテナントを充実させることで、
「週末に1回行くSC」
から
「週に何度も利用するSC」
へ変えていくことができます。
特に地方SCでは、広域集客型テナントだけでなく、日常利用を支えるテナントを組み合わせることが重要です。
集客力を考える際には、
広域集客+日常利用
という二つの軸を持つことがポイントです。
方法3.キッズ・ファミリー向け施設を強化する
ファミリー層は、SCにとって重要な集客ターゲットです。
特に、
- 大型キッズパーク
- アミューズメント
- 子ども向けスポーツ
- 玩具・ホビー
- 子供服
- ベビー用品
- 教育・学習
- 親子向けイベント
などは、SCへの来館目的をつくりやすい業種です。
また、子ども向け施設は単純な「集客」だけではなく、滞在時間を伸ばす効果も期待できます。
例えば、
キッズ施設
+
フードコート
+
ファミリーレストラン
+
子供服
+
玩具
という組み合わせができれば、「子どもを遊ばせる」という目的からSC全体の消費につなげることができます。
さらに、ファミリー層は複数人で来館するケースが多いため、1組あたりのSC内消費を高める可能性もあります。
方法4.飲食・フードコートを強化する
飲食はSCの集客力を高めるうえで非常に重要なカテゴリーです。
特に、
- 人気レストラン
- 地域の有名店
- フードコート
- カフェ
- スイーツ
- テイクアウト
- 食物販
などを組み合わせることで、買い物以外の来館目的をつくることができます。
重要なのは、「飲食店舗数を増やすこと」ではありません。
例えば、
「この店に行くためにSCへ行く」
という目的店舗をつくることが重要です。
一方で、日常的に利用されるカフェやファストフードなども、来館頻度を高める役割を持っています。
そのため、
目的来館型飲食+日常利用型飲食
のバランスが重要になります。
方法5.体験型テナントを増やす
EC化が進むほど、SCでは「リアル店舗でしかできない体験」が重要になります。
例えば、
- アミューズメント
- スポーツ体験
- VR
- ワークショップ
- クッキング
- DIY
- アート
- 大型キッズ施設
- イベントスペース
などです。
これらは商品を購入するだけの店舗とは異なり、
「体験するためにSCへ行く」
という新しい来館目的を生み出します。
経済産業省の調査でも、国内EC市場は継続的に拡大しています。
そのため、SCがECと同じ「商品販売」だけで競争するのではなく、
リアルだからこそ提供できる体験
を増やすことが、今後の集客戦略として重要になります。
方法6.イベント・地域コミュニティ機能を強化する
イベントは、SCへの来館理由を短期間でつくることができる施策です。
例えば、
- 季節イベント
- キャラクターイベント
- 地域のお祭り
- マルシェ
- ワークショップ
- スポーツイベント
- 子ども向けイベント
- 地域団体とのイベント
などがあります。
ただし、イベントを毎回単発で考えるのではなく、年間スケジュールとして設計することが重要です。
例えば、
春:地域マルシェ
夏:子どもイベント
秋:スポーツイベント
冬:クリスマスイベント
というように、年間を通じて来館目的をつくります。
さらに、イベントをテナント利用につなげることも重要です。
イベント来館者を、
イベント → 飲食 → 買い物 → キッズ → 再来館
へつなげることで、イベントそのものだけでなくSC全体の集客力向上につながります。
方法7.SC独自の「ここにしかない店」をつくる
競合SCとの差別化も集客力を高める重要なポイントです。
近隣SCと同じようなテナント構成では、「わざわざそのSCへ行く理由」が弱くなります。
そこで、
- 地域初出店
- 地域唯一の店舗
- 人気専門店
- 地域の有名飲食店
- 地域産品
- 大型専門店
- 特殊な体験型店舗
などを誘致します。
特に重要なのは、
「店舗数」ではなく「来館理由になる店舗」
です。
100店舗あるSCより、50店舗でも「ここにしかない店舗」が複数あるSCの方が、目的来館を生み出せる場合があります。
リーシングでは、
「空いている区画を埋める」
だけではなく、
「このSCに行く理由をつくる」
という視点が重要になります。
方法8.SC内の回遊性を高める
集客力を高める場合、「来館者数」だけでなく「館内をどれだけ回遊してもらうか」も重要です。
例えば、
- 食品スーパーは奥側
- 人気テナントを異なるエリアに配置
- エスカレーター周辺に集客店舗
- フードコート周辺にキッズ・ファミリー店舗
- イベントスペースを動線上に配置
など、顧客が自然に館内を歩く仕掛けをつくります。
特に大型SCでは、集客テナントを一か所に集中させると、それ以外のエリアが弱くなる場合があります。
そのため、
「目的店舗を点在させ、その間に回遊したくなるテナントを配置する」
という考え方が重要です。
方法9.デジタルマーケティングを強化する
現在のSC集客では、デジタル施策も欠かせません。
例えば、
- SC公式アプリ
- LINE
- SNS
- デジタルクーポン
- 会員限定イベント
- 購買履歴を活用した情報配信
- GPS・位置情報を活用した販促
- オンライン広告
- Web広告
などです。
重要なのは、単純に情報を発信することではありません。
例えば、
「過去にキッズイベントへ参加した顧客に、次回のキッズイベントを案内する」
「飲食利用の多い顧客に、レストランキャンペーンを案内する」
など、顧客属性に応じて情報を出し分けることが重要です。
今後は、SCのデジタルマーケティングでも生成AIやデータ分析の活用が進む可能性があります。
方法10.「来館する理由」を複数つくる
最も重要なのが、この考え方です。
SCの集客力を高めるためには、
「1回来てもらう理由」ではなく、「何度も来てもらう理由」をつくること
が重要です。
例えば、
月曜日:フィットネス
火曜日:食品・ドラッグ
水曜日:美容
木曜日:クリニック
金曜日:飲食
土曜日:キッズ・エンタメ
日曜日:家族で買い物
というように、1人の顧客がSCを利用する理由を複数持てる状態が理想です。
これをSC小売ラボでは、
「来館目的の複線化」
と考えます。
来館目的が一つしかないSCは、その目的がなくなれば来館もなくなります。
一方、
買い物+飲食+サービス+医療+美容+体験
という複数の目的があれば、SCは生活の中に組み込まれやすくなります。
ショッピングセンターの集客力を高める10の方法を比較
| 方法 | 新規集客 | 来館頻度 | 滞在時間 | 回遊性 | 将来性 |
|---|---|---|---|---|---|
| 核・集客テナント強化 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
| 日常利用テナント強化 | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
| キッズ・ファミリー | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
| 飲食・フードコート | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
| 体験型テナント | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
| イベント | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
| 独自テナント | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
| 回遊性向上 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★★ |
| デジタルマーケティング | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
| 来館目的の複線化 | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ |
※評価はSC小売ラボによる独自評価です。
集客力を高めるために「やってはいけないこと」
集客施策では、逆に注意すべきポイントもあります。
「イベントをやれば集客できる」と考える
イベントだけで一時的に来館者数を増やしても、テナント売上や再来館につながらなければ、SC全体の価値向上にはつながりません。
テナント数だけを増やす
店舗数を増やしても、テナント同士が競合したり、顧客ニーズと合っていなかったりすれば、集客力は高まりません。
人気テナントだけを集める
人気テナントを集めても、顧客が館内を回遊しなければ、SC全体への波及効果は限定的です。
競合SCをそのまま真似する
競合SCと同じテナント構成では、顧客から見た「そのSCへ行く理由」が弱くなります。
集客力を高めるためのKPI
SCの集客施策を評価する際には、来館者数だけで判断しないことが重要です。
例えば、次のKPIを設定できます。
| KPI | 確認すること |
|---|---|
| 来館者数 | SCに何人来たか |
| 来館頻度 | 1人あたり何回来館したか |
| 滞在時間 | SCにどれだけ滞在したか |
| 回遊率 | 複数エリアを利用したか |
| テナント利用率 | SC内で何店舗利用したか |
| 客単価 | 1来館あたりいくら消費したか |
| 再来館率 | 再び来館したか |
| イベント参加率 | イベントが来館につながったか |
| アプリ利用率 | デジタル施策が利用されたか |
| SC全体売上 | 最終的に売上へつながったか |
このように、
集客 → 回遊 → 滞在 → 購買 → 再来館
という流れでKPIを見ることが重要です。
まとめ|これからのSC集客は「来館理由を複線化する」ことが重要
ショッピングセンターの集客力を高める方法は、広告やイベントだけではありません。
重要なのは、
- 核・集客テナントを強化する
- 日常利用を増やす
- キッズ・ファミリー機能を強化する
- 飲食を強化する
- 体験型テナントを増やす
- イベント・地域交流を強化する
- 独自性のあるテナントを誘致する
- 館内回遊性を高める
- デジタルマーケティングを活用する
- 来館目的を複線化する
という10の視点です。
特にこれからのSCでは、
「何店舗入っているか」よりも、「何回来る理由があるか」
が重要になっていくと考えられます。
ECで購入できる商品が増える一方、SCには、
買い物・飲食・医療・美容・子育て・スポーツ・エンターテインメント・交流
など、リアルな場所だからこそ提供できる価値があります。
そのため、今後のSC集客では、
物販で集客するSCから、生活・サービス・体験を組み合わせて集客するSCへ
という発想が重要になります。
そしてリーシングにおいても、「空いている区画に何を入れるか」ではなく、
「このSCに新しい来館目的をどうつくるか」
という視点でテナントミックスを設計することが、集客力の高いSCをつくるための重要なポイントになるでしょう。


