地方のショッピングセンターでは、都市部とは異なるテナントニーズがあります。
人口減少や高齢化、車社会、ECの普及などによって、単純に「有名ブランドを誘致すれば集客できる」という時代ではなくなっています。
一方で、地域住民の生活に密着した業種や、SCへの来館目的をつくれる業種には、地方でも高い出店需要があります。
特に重要なのは、「出店したいテナントが多い業種」と「SCに必要な業種」は必ずしも同じではないということです。
本記事では、地方ショッピングセンターで出店需要が高いテナント業種と、その背景、リーシングでの活用方法について解説します。
地方SCで出店需要が高いテナント業種10選
地方ショッピングセンターでは、次のような業種が比較的出店需要を集めやすい傾向があります。
| 業種 | 出店需要 | 集客力 | 来館頻度 | 地方SCとの相性 |
|---|---|---|---|---|
| ドラッグストア | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★★ |
| 飲食店 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
| クリニック・医療 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★★ |
| 美容・理容 | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★★★ |
| フィットネス | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ |
| キッズ・子育て関連 | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
| 生活サービス | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★★★ |
| ペット関連 | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
| リユース | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
| エンターテインメント | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
ここから、それぞれの特徴を詳しく見ていきます。
1.ドラッグストア
地方SCとの相性が非常に良い業種の一つがドラッグストアです。
医薬品だけでなく、化粧品、日用品、食品など取り扱い商品が幅広く、地域住民の日常的な買い物需要を取り込むことができます。
特に地方では車でまとめ買いをする消費者も多いため、駐車場を備えたSCとの相性が良くなります。
ドラッグストアの強み
- 来店頻度が高い
- 日常生活に必要な商品を扱う
- 食品・日用品との相性が良い
- 幅広い年齢層を集客できる
- 周辺住民の生活拠点になりやすい
SC側にとっては、高頻度来館を生み出すテナントとして重要です。
2.飲食店
地方SCでは、飲食店も重要なリーシングターゲットです。
特に、ファミリー層が多い地域では、ファミリーレストラン、カフェ、ラーメン、焼肉、回転寿司など、家族で利用しやすい業態の需要があります。
また、地方では「SCに買い物に行く」だけでなく、「SCで食事をする」という来館目的をつくることが重要です。
飲食テナントの役割
飲食店には、
集客 → 滞在時間増加 → 館内回遊 → 他テナント利用
という効果が期待できます。
そのため、単純な売上だけではなく、SC全体への波及効果を考えてリーシングする必要があります。
3.クリニック・医療関連
地方SCで今後さらに重要性が高まる可能性があるのが、クリニックなどの医療関連テナントです。
地方では高齢化が進む地域も多く、医療・健康サービスへのニーズが高まっています。
内科、整形外科、眼科、歯科、皮膚科、小児科など、地域の医療ニーズに応じたクリニックを誘致することで、SCが単なる買い物施設ではなく、地域生活を支える施設になります。
医療テナントのメリット
- 定期的な来館が期待できる
- 高齢者など新たな顧客層を獲得できる
- 平日集客につながる
- SCの地域密着性を高められる
- 周辺のサービス業との相乗効果が期待できる
特に、食品スーパーやドラッグストアとの組み合わせは相性が良いでしょう。
4.美容・理容・リラクゼーション
美容室、理容室、ネイル、エステ、リラクゼーションなどの美容・サービス業も地方SCとの相性が良い業種です。
これらの業種は、ECで代替することが難しく、リアル店舗でなければ提供できないサービスであることが大きな特徴です。
また、定期的な利用が期待できるため、来館頻度の向上にもつながります。
特に重要なのは「高頻度来館」
例えば美容室を月1回利用する顧客がSCに来館すれば、その前後に飲食店や食品、ドラッグストアなどを利用する可能性があります。
そのため、サービス系テナントは売上規模だけで判断せず、来館頻度を高めるテナントとして評価することが重要です。
5.フィットネス・スポーツ関連
地方SCでは、フィットネスクラブや24時間ジム、ヨガ、スポーツスクールなども有力な出店候補です。
フィットネスの特徴は、非常に高い来館頻度が期待できることです。
週に複数回利用する顧客がいれば、それだけSCへの接触機会が増加します。
フィットネスのリーシング上のメリット
- 高頻度来館
- 比較的長期利用が期待できる
- 空床の大型区画を活用しやすい
- 飲食・物販との相乗効果が期待できる
- 若年層からシニアまで幅広い客層を狙える
特に、2階・3階など物販テナントが入りにくい区画の活用にも適しています。
6.キッズ・子育て関連
ファミリー型の地方SCでは、キッズ・子育て関連テナントも重要です。
例えば、
- 子ども服
- 玩具
- ベビー用品
- 子ども向け教室
- 英会話
- 学習塾
- 屋内遊戯施設
- 写真館
- 子ども向けスポーツスクール
などがあります。
地方では車でSCへ来館するファミリーも多いため、**「子どもを連れて行きやすい施設」**であることが競争力になります。
子育て関連テナントは複数業種で考える
子育て層をターゲットとする場合、単独のキッズテナントを誘致するだけではなく、
子ども向けサービス × 飲食 × 食品 × 生活サービス
というように、ファミリーの1日の行動をSC内で完結させることが重要です。
7.生活サービス
地方SCで意外と重要なのが生活サービスです。
例えば、
- クリーニング
- 鍵・靴修理
- 携帯電話
- 保険
- 買取
- 宅配
- リフォーム相談
- 不動産
- 各種手続きサービス
などです。
これらは大型集客施設のような派手な集客力はありませんが、地域住民の生活に密着しています。
そのため、「わざわざSCに行く理由」を増やすテナントとして重要です。
8.ペット関連
ペット関連市場も地方SCで注目したい業種です。
ペットショップだけでなく、
- トリミング
- ペットホテル
- 動物病院
- ペット用品
- ペット美容
- ペット関連サービス
など、さまざまな業態があります。
特にペット関連サービスは、物販ECだけでは代替しにくいという特徴があります。
ペット関連のポイント
地方SCでは、広い駐車場を活用できるため、ペット同伴で来館しやすい環境をつくることで、施設全体の差別化につながる可能性があります。
9.リユース・買取
近年注目したいのがリユース・買取関連業種です。
ブランド品、衣料品、家具、家電、玩具、トレーディングカードなど、さまざまなカテゴリーがあります。
リユース業態は、
「売る」+「買う」
という2つの来館動機をつくれることが特徴です。
また、既存のSC利用者だけでなく、周辺地域から新たな顧客を呼び込める可能性があります。
特に、人口減少地域では新品販売だけに依存しないテナント構成を考えるうえで重要な選択肢になります。
10.エンターテインメント
最後に、地方SCで集客力を高めるうえで重要なのがエンターテインメントです。
例えば、
- アミューズメント
- 屋内遊戯施設
- カラオケ
- 映画館
- ボウリング
- ゲームセンター
- イベントスペース
などがあります。
エンターテインメントの最大の特徴は、「買い物以外の来館目的」をつくれることです。
ECが普及するほど、SCには「商品を買う場所」以外の価値が求められます。
そのため、エンターテインメントは今後の地方SCにおいて重要な差別化要素になる可能性があります。
地方SCでは「高頻度型」と「目的来館型」を組み合わせる
地方SCのテナントミックスを考える際には、業種を単純に並べるだけでは不十分です。
重要なのは、来館目的と来館頻度の組み合わせです。
| タイプ | 主な業種 | 役割 |
|---|---|---|
| 高頻度型 | ドラッグストア、クリーニング、美容、医療 | 来館頻度を高める |
| 集客型 | 食品、飲食、エンタメ、リユース | 来館目的をつくる |
| 滞在型 | 飲食、カフェ、キッズ、エンタメ | 滞在時間を伸ばす |
| 利便性型 | 携帯、保険、生活サービス | 生活利便性を高める |
| 差別化型 | 専門店、地域店、体験型店舗 | 競合との差別化 |
このように役割を分けることで、SC全体のテナントミックスを設計しやすくなります。
「出店需要が高い業種」と「誘致すべき業種」は違う
地方SCのリーシングで注意したいのが、この2つを混同しないことです。
例えば、ある業種から出店希望が多かったとしても、その業種がSCに必要とは限りません。
逆に、SCに必要な業種でも、出店企業が少なければリーシング難易度は高くなります。
そこで、テナント候補を次の4象限で整理すると効果的です。
| SCとの適合度:高 | SCとの適合度:低 | |
|---|---|---|
| 出店需要:高 | 最優先で誘致 | 条件を精査 |
| 出店需要:低 | 戦略的に開拓 | 優先度を下げる |
特に重要なのは、
「出店需要は低いが、SCにとって必要なテナント」
です。
ここを見つけ出し、出店企業を新規開拓することがリーシング担当者の重要な役割になります。
地方SCのリーシングでは「商圏ニーズ」から逆算する
地方SCのテナント構成を考える際には、
「この会社を誘致したい」
から始めるのではなく、
「商圏のお客様は何を求めているのか?」
から逆算することが重要です。
具体的には、
STEP1:商圏を分析する
- 人口
- 世帯数
- 年齢構成
- 世帯構成
- 子育て世帯
- 高齢者
- 昼間人口
- 夜間人口
- 将来人口
などを確認します。
STEP2:顧客ニーズを分析する
顧客アンケートや来館データ、購買データなどから、現在のSCに不足している機能を確認します。
STEP3:競合SCと比較する
競合SCのテナント構成を調査し、
「競合にあって、自SCにないもの」
「自SCにあって、競合にないもの」
を整理します。
STEP4:不足業種を特定する
単純な店舗数ではなく、
商圏ニーズに対して不足している業種
を特定します。
STEP5:リーシングマトリクスで優先順位を決める
「出店需要」と「SCとの適合度」を軸にして、誘致優先順位を決定します。
地方SCでは「地域密着型テナント」が武器になる
地方SCのリーシングでは、全国チェーンだけに目を向ける必要はありません。
地域で人気の飲食店や専門店、サービス事業者などを誘致することで、SC独自の魅力をつくることができます。
例えば、
全国チェーン × 地域人気店
という組み合わせです。
全国チェーンによって安定した集客・利便性を確保しながら、地域店によって「このSCにしかない理由」をつくります。
これは、ECや競合SCとの差別化という観点でも重要です。
今後の地方SCで重要になるテナントとは?
今後の地方SCでは、単純な物販テナントだけではなく、
「リアル店舗でなければ提供しにくい価値」
を持つテナントがより重要になると考えられます。
具体的には、
- 医療
- 美容
- フィットネス
- 教育
- キッズ
- ペット
- 飲食
- エンターテインメント
- リユース
- 生活サービス
などです。
これらは、ECでは完全に代替しにくく、来館そのものに意味を持たせやすい業種です。
まとめ|地方SCのリーシングは「出店企業」ではなく「顧客」から考える
地方ショッピングセンターで出店需要が高い業種には、ドラッグストア、飲食、医療、美容、フィットネス、キッズ、生活サービス、ペット、リユース、エンターテインメントなどがあります。
しかし、重要なのは単純に「出店需要の高い業種」を集めることではありません。
商圏分析 → 顧客ニーズ分析 → 不足業種の特定 → テナントミックス設計 → リーシングマトリクス → テナント誘致
という流れで考えることが重要です。
地方SCのリーシングでは、
「出店したいテナントを集める」から「地域のお客様に必要とされるテナントを集める」
という発想への転換が求められます。
最終的には、個々のテナントの売上だけを見るのではなく、
集客力 × 来館頻度 × 回遊性 × 滞在時間 × SC全体売上 × 地域での存在価値
を高めるテナントミックスをつくることが、地方SCのリーシング成功につながります。


