ショッピングセンターの集客力を考えるうえで、食品スーパーは非常に重要な役割を持っています。
日本ショッピングセンター協会(JCSC)の「SC白書2026」によると、2025年末時点で全国のSCは3,013施設。そのうち、食品スーパー(SM)を1核とするSCは763施設、全体の25.3%を占めています。これは総合スーパー(GMS)を1核とするSCの759施設、25.2%とほぼ同水準です。
出典:日本ショッピングセンター協会「SC白書/全国のSC数・概況」
日本ショッピングセンター協会「SC白書/全国のSC数・概況」
また、SM+ホームセンター、SM+ドラッグストア、SM+専門店など、食品スーパーを核とする複数核型SCも存在します。
つまり、食品スーパーは日本のSCにおいて、単なる「テナントの一業種」ではなく、SC全体の来館頻度を支える核テナントとして位置付けられていると考えられます。
では、なぜ食品スーパーを併設したSCは強いのでしょうか。
SC小売ラボでは、
- 来館頻度
- 日常利用
- 他テナントへの回遊
- 滞在時間
- 商圏の安定性
- SC全体の売上
- 空床対策
という7つの視点から分析します。
食品スーパーは「高頻度来館」をつくりやすい
食品スーパー併設型SCの最大の強みは、来館頻度を高めやすいことです。
ファッションや家具、家電などは、毎日購入する商品ではありません。
一方、食品は日常的に購入するため、食品スーパーには繰り返し来店する理由があります。
例えば、
「今日は夕食の食材を買う」
「週末にまとめ買いする」
「仕事帰りに惣菜を買う」
「牛乳やパンなどを買い足す」
といった利用が考えられます。
つまり、食品スーパーには、
「特別な目的がなくてもSCへ行く理由」
をつくる機能があります。
SC小売ラボでは、これを「日常来館エンジン」と考えます。
SCの集客を考える際には、
来館者数 × 来館頻度
の両方を考える必要があります。
大型イベントや人気テナントは新規来館を増やすことができますが、食品スーパーは日常的な来館頻度を支える役割を持ちます。
そのため、食品スーパーを核にしたSCでは、食品スーパーそのものの売上だけではなく、SC全体の来館頻度を高める効果を考えることが重要です。
食品スーパーがあると「ついで買い」が生まれる
食品スーパーのもう一つの強みが、他テナントとの相乗効果です。
例えば食品スーパーに買い物に来た顧客が、
「ドラッグストアにも寄る」
「100円ショップにも寄る」
「クリーニングを出す」
「カフェで休憩する」
「子どもの習い事に行く」
といった行動を取ることがあります。
このように、食品スーパーへの来店が他テナントへの利用につながれば、SC全体の売上を押し上げる可能性があります。
特に相性が良いのが、
- ドラッグストア
- 100円ショップ
- 美容室
- クリーニング
- 飲食店
- ベーカリー
- クリニック
- 子ども関連サービス
- 生活サービス
などです。
SC小売ラボ分析
重要なのは、食品スーパーを単独で評価しないことです。
「食品スーパーの売上がいくらあるか」
だけではなく、
「食品スーパーに来た顧客を、SC内のどのテナントへ回遊させられるか」
を見る必要があります。
つまり食品スーパーは、集客テナントであると同時に、他テナントへ顧客を送る起点にもなります。
食品スーパーはSCの「日常利用」をつくる
食品スーパー併設型SCが強い理由を考えるとき、「非日常」と「日常」の組み合わせが重要になります。
例えば、
- ファッション → 月1回程度
- 家電 → 必要なとき
- 映画 → 作品を見たいとき
- 飲食 → 週数回~月数回
- 食品 → 日常的
というように、テナントによって利用頻度が異なります。
食品スーパーを核にすることで、SCに「日常利用」という土台をつくることができます。
その上に、
日常利用
+
サービス
+
飲食
+
専門店
+
エンターテインメント
を組み合わせることで、来館目的を複数持つSCを構築できます。
JCSCの2025年データでも、SCテナントの構成は物販61.0%、飲食18.2%、サービス20.8%となっています。サービスの構成比は2020年の19.9%から2025年には20.8%へ上昇しています。
出典:日本ショッピングセンター協会「SC白書/全国のSC数・概況」
SC白書/全国のSC数・概況
食品スーパーを核にしながら、サービスや飲食を組み合わせることは、今後のSCのテナントミックスを考えるうえでも重要です。
食品スーパーは「商圏の安定性」を高めやすい
食品スーパーには、SCの商圏を安定させる役割もあります。
ファッションやエンターテインメントを目的とする顧客は、競合施設へ移動する可能性があります。
しかし食品は生活必需品であるため、商圏内の住民が日常的に利用する可能性があります。
特に、
- ファミリー世帯
- 子育て世帯
- 高齢世帯
- 共働き世帯
など、日常的に食品を購入する世帯が多い地域では、食品スーパーを核としたSCが地域の日常生活に組み込まれやすくなります。
SC小売ラボ分析
ここで重要なのは「商圏人口」だけではありません。
例えば同じ10万人の商圏でも、
「単身者が多い地域」
「ファミリーが多い地域」
「高齢者が多い地域」
では食品スーパーに求められる品揃えや営業時間、惣菜、サービスが変わります。
したがって食品スーパー併設型SCでは、
商圏人口 × 世帯構成 × 食品購買需要
まで分析する必要があります。
食品スーパー+サービスの組み合わせが強い
食品スーパー単体よりも、サービス系テナントを組み合わせることでSCの利用目的を増やすことができます。
例えば、
| 食品スーパーとの組み合わせ | 主な利用目的 |
|---|---|
| ドラッグストア | 食品+医薬品・日用品 |
| クリニック | 買い物+通院 |
| クリーニング | 買い物+生活サービス |
| 美容室 | 買い物+美容 |
| フィットネス | 買い物+健康 |
| 学習塾 | 買い物+教育 |
| キッズ施設 | 買い物+子育て |
| 飲食店 | 買い物+食事 |
| 100円ショップ | 食品+生活雑貨 |
JCSCの統計でも、2025年のSCテナントに占めるサービス業の割合は20.8%となっています。
出典:日本ショッピングセンター協会「SC白書/全国のSC数・概況」
日本ショッピングセンター協会「SC白書/全国のSC数・概況」
食品スーパーが「日常の来館理由」をつくり、サービスが「目的来館」をつくるという組み合わせにすると、SCの利用目的を複線化できます。
SC小売ラボ分析
これは地方SCほど重要になります。
大型商業施設のようにファッションやエンターテインメントだけで広域集客するのではなく、
食品+生活サービス+飲食+専門店
という構成によって、近隣住民の日常利用を取り込むことができるためです。
食品スーパーは「核テナント」としてSCのテナントミックスを設計しやすい
食品スーパーを核にする場合、周辺のテナント構成も比較的考えやすくなります。
例えば、
食品スーパー
↓
ドラッグストア・100円ショップ
↓
生活サービス
↓
飲食
↓
美容・医療
↓
キッズ・教育
というように、日常生活に関連するカテゴリーを集めることができます。
一方で、食品スーパーと競合するテナントを過剰に配置すると、SC内で顧客を奪い合う可能性があります。
そのため、
「食品スーパーがあるから食品テナントを増やす」
のではなく、
「食品スーパーを核として、どのカテゴリーを周囲に配置するとSC全体の価値が高まるか」
という考え方が必要です。
食品スーパーを核としたリーシングマトリクス
| テナントカテゴリー | 食品スーパーとの相乗効果 | 来館頻度 | 回遊性 |
|---|---|---|---|
| ドラッグストア | 高 | 高 | 高 |
| 100円ショップ | 高 | 高 | 高 |
| クリーニング | 高 | 中~高 | 高 |
| 美容室 | 中~高 | 中 | 中 |
| クリニック | 中~高 | 中~高 | 中 |
| 飲食 | 高 | 中~高 | 高 |
| キッズ・教育 | 高 | 高 | 高 |
| ファッション | 中 | 中 | 中 |
| 家具・インテリア | 中 | 低 | 低 |
| 大型エンタメ | 高 | 中 | 高 |
SC小売ラボ独自分析
このように考えると、食品スーパーのリーシングでは「何店舗入れるか」ではなく、食品スーパーを起点としてどのような顧客動線をつくるかが重要になります。
食品スーパーは大型空床対策にも使いやすい
食品スーパーは、SCの大型区画を活用する核テナントとしても重要です。
JCSCの2025年データでは、SMを1核とするSCが763施設、25.3%存在します。また、SM+ホームセンターが144施設、SM+専門店が101施設、SM+ドラッグストアが23施設あります。
出典:日本ショッピングセンター協会「SC白書/全国のSC数・概況」
日本ショッピングセンター協会「SC白書/全国のSC数・概況」
これは、食品スーパーが単独核としてだけでなく、他の核テナントや専門店と組み合わせてSCを構成するケースが一定数存在することを示しています。
特に地方SCでは、大型GMSなどの撤退によって大規模な空床が発生することがあります。
その場合、
大型空床
↓
食品スーパー誘致
↓
周辺テナント再構築
↓
SC全体の再生
という流れをつくることができます。
SC小売ラボ分析
ここで重要なのは、食品スーパーを「空床を埋めるテナント」としてだけ考えないことです。
食品スーパーを核にすることで、ドラッグストア、飲食、サービス、キッズ、医療などを組み合わせ、新しいテナントミックスを構築できる可能性があります。
食品スーパー併設型SCは「売上」だけでなく「来館頻度」で評価する
食品スーパーを核にしたSCを評価するとき、食品スーパー単体の売上だけを見るのは不十分です。
例えば、
食品スーパーの売上
+
食品スーパーからの回遊
+
他テナント売上
+
来館頻度
+
再来館率
まで考える必要があります。
JCSCの2025年SC販売統計では、既存SCの年間売上高は前年比3.5%増、SC全体の年間売上高は推計33兆1,238億円となりました。また、キーテナントを除くテナントの売上高は前年比4.0%増となっています。
出典:日本ショッピングセンター協会「SC販売統計調査報告 2025年年間」
日本ショッピングセンター協会「SC販売統計調査報告 2025年年間」
JCSCは、2025年のSC売上について、販促施策、イベント、テナント入れ替え、改装などが売上増に寄与したとしています。
つまり、SCの売上は単一テナントだけではなく、施設全体のテナント構成や来館動機によって変化することが分かります。
食品スーパーを核にする場合も同じで、
「食品スーパーの売上を最大化する」
だけではなく、
「食品スーパーを起点としてSC全体の売上を最大化する」
という視点が重要です。
これからの食品スーパー併設型SCに必要なテナント構成とは?
今後の食品スーパー併設型SCでは、単純に食品スーパー+物販専門店という構成だけではなく、
食品+サービス+体験
への拡張が重要になると考えられます。
例えば、
日常利用
- 食品スーパー
- ドラッグストア
- 100円ショップ
- 日用品
- クリーニング
高頻度サービス
- クリニック
- 美容室
- フィットネス
- リラクゼーション
- 調剤薬局
ファミリー
- キッズ施設
- 学習塾
- 子ども向け教室
- ベビー・キッズ関連
目的来館
- 飲食
- 大型専門店
- リユース
- ペット
- エンターテインメント
という構成です。
これによって、
日常利用
+
高頻度サービス
+
ファミリー利用
+
目的来館
という複数の来館動機をつくることができます。
SC小売ラボ分析
今後の食品スーパー併設型SCでは、
「食品スーパーが強いからSCが強い」
という考え方から一歩進んで、
「食品スーパーを起点にSC全体の来館理由を何層つくれるか」
が重要になります。
結論|食品スーパーは「SCの売上」ではなく「SCの利用頻度」をつくる
食品スーパー併設型SCが強い理由を整理すると、以下のようになります。
| 強さの要因 | SCへの効果 |
|---|---|
| 食品を扱う | 日常的な来館理由をつくる |
| 高頻度利用 | 再来館を促しやすい |
| ワンストップ性 | 複数カテゴリーの購買を獲得 |
| 回遊 | 他テナントへの利用につながる可能性 |
| 商圏安定性 | 近隣住民の日常利用を取り込める |
| サービスとの相性 | 来館目的を複線化できる |
| 大型区画対応 | 核テナントとして活用できる |
| テナントミックス | 日常・サービス・体験を組み合わせやすい |
JCSCの2025年データを見ると、食品スーパーを1核とするSCは763施設、25.3%を占めています。さらにSM+ホームセンター、SM+専門店、SM+ドラッグストアなど、食品スーパーを核とする複数核型SCも存在します。
出典:日本ショッピングセンター協会「SC白書/全国のSC数・概況」
日本ショッピングセンター協会「SC白書/全国のSC数・概況」
このことからも、食品スーパーは日本のSCにおいて重要な核テナントの一つと位置付けられます。
ただし、食品スーパーを入れれば必ずSCが強くなるわけではありません。
重要なのは、
食品スーパー
↓
ドラッグストア・生活サービス
↓
飲食
↓
キッズ・教育
↓
医療・美容
↓
体験・エンターテインメント
というように、食品スーパーを起点としてSC全体のテナントミックスを設計することです。
SC小売ラボでは、食品スーパー併設型SCの本当の強さは、食品スーパー単体の売上ではなく、
「日常的な食品購買をSC全体の来館・回遊・再来館につなげられること」
にあると考えます。
これからの地方SCやNSCでは、人口減少や大型店撤退への対応が求められる中で、食品スーパーを核とした**「日常利用型SC」**の重要性はさらに高まる可能性があります。


