トライアルが地方で強い理由を出店戦略から分析!

小売徹底分析

トライアルは、地方を中心に店舗網を拡大してきたディスカウント型の小売企業です。

2025年6月期の連結売上高は8,038億円、店舗数は352店舗となり、売上高は前期比12.0%増、既存店売上高も3.6%増となりました。また、店舗数は前期末から34店舗増加しています。

出典:トライアルホールディングス「業績ハイライト」
トライアルホールディングス「業績ハイライト」

トライアルの特徴は、単純に「安い商品を販売するスーパー」という点だけではありません。

スーパーセンター、メガセンター、smart、TRIAL GOなど複数の店舗フォーマットを持ち、商圏や物件条件に応じて出店形態を変えています。

出典:トライアルホールディングス「ビジネスモデル」
トライアルホールディングス「ビジネスモデル」

では、なぜトライアルは地方で強いのでしょうか。

SC小売ラボでは、その理由を「店舗フォーマット」「居抜き出店」「ドミナント」「ワンストップMD」「IT・AI」の5つの視点から分析します。

トライアルの主力業態「スーパーセンター」が地方と相性が良い

トライアルの主力フォーマットはスーパーセンターです。

トライアル公式資料によると、スーパーセンターは郊外を中心に展開する生活必需品型の店舗で、食品に加えて衣料・住関連商品を扱い、約4,000㎡の売場に約6~7万点の商品を展開しています。

また、地方都市を中心に展開するメガセンターは約8,000㎡、約10万点の商品を扱う大型フォーマットとされています。

出典:トライアルホールディングス「ビジネスモデル」
トライアルホールディングス「ビジネスモデル」

フォーマット 主な立地 売場面積 主な特徴
スーパーセンター 郊外 約4,000㎡ 食品+衣・住
メガセンター 地方都市 約8,000㎡ 食品~趣味嗜好品
smart 都市部・小商圏 約1,400㎡ 食品中心
TRIAL GO等 小商圏 小型 サテライト型

このように、トライアルは店舗規模を固定していません。

大きな商圏にはメガセンター、小~中規模商圏にはスーパーセンター、小商圏には小型フォーマットというように、商圏に合わせて店舗モデルを変えられます。

SC小売ラボ分析

地方では自動車を利用した買い物が重要になるため、「広い売場+大型駐車場+ワンストップショッピング」というトライアルのフォーマットは、地方の生活構造と相性が良いと考えられます。

→ 地方SCで出店需要が高いテナント業種

「居抜き出店」が地方での出店競争力を高めている

トライアルの出店戦略で特に注目したいのが、居抜き出店です。

トライアルは公式に、スーパーセンターを主軸としながら、食品スーパー、家電・家具量販店、ホームセンター、アパレル店舗などの他社撤退跡地へ柔軟に居抜き出店する方針を示しています。

また、ドミナント出店によって自社店舗間の競合を抑えることも出店戦略として掲げています。

出典:トライアルホールディングス「対処すべき課題」
トライアルホールディングス「対処すべき課題」

地方では大型スーパーなどの撤退によって、大規模な空床が発生するケースがあります。

こうした物件を新築ではなく既存建物を活用して出店できることは、トライアルにとって大きなメリットになります。

実際、2026年4月に開業した「メガセンタートライアル浜北店」は、西友閉店後の建物への居抜き出店です。

西友時代の約1,000坪から約3,000坪へ売場を拡張し、家電やアパレル専門店も導入しています。

出典:トライアルホールディングス「メガセンタートライアル浜北店」
トライアルホールディングス「西友跡地に“次世代メガセンター”を静岡県初出店」

さらに同社によると、同店は西友跡地へのトライアル居抜き出店として2店舗目となります。

この事例からも、

大型店撤退 → トライアル出店 → 売場拡張 → ワンストップ型店舗へ再構築

という出店モデルが確認できます。

SC小売ラボ分析

これは地方SCにとって非常に重要です。

大型核テナントの撤退後に新しい大型テナントを探す場合、既存建物の規模や設備が制約になります。

一方、トライアルは既存大型物件を活用できるため、地方の大型空床との相性が良いと考えられます。

→ SCの空床率を下げる方法

ドミナント出店によって地方で「面」を取る

トライアルは、九州を中心としたドミナント展開を軸に、九州以外の地域でも店舗ネットワークを拡大する方針を示しています。

出典:トライアルホールディングス「対処すべき課題」
トライアルホールディングス「対処すべき課題」

ドミナント出店には、

  • 物流効率を高めやすい
  • 店舗間で人材を活用しやすい
  • 地域でブランド認知を高めやすい
  • 販促効率を高めやすい
  • 店舗網によって地域商圏を広くカバーできる

といったメリットがあります。

特に地方では、一店舗だけ遠隔地に出店するよりも、一定のエリアに複数店舗を配置することで、物流や店舗運営の効率化を図りやすくなります。

トライアルは公式資料で、九州を中心としたドミナント展開を軸としながら、九州以外でもネットワークを拡大する方針を明示しています。

出典:トライアルホールディングス「対処すべき課題」
トライアルホールディングス「対処すべき課題」

SC小売ラボ分析

トライアルの地方戦略は、

「全国に一店舗ずつ出店する」

というより、

「地域を面として押さえる」

という考え方で見ると理解しやすくなります。

「食品+衣・住」のワンストップMDが地方で強い

トライアルの公式資料では、スーパーセンターを「食品+衣・住」を扱う生活必需品型店舗として位置付けています。

また、最大10万点に及ぶ商品を扱う店舗フォーマットも展開しています。

出典:トライアルホールディングス「ビジネスモデル」
トライアルホールディングス「ビジネスモデル」

例えば、

  • 食品
  • 生鮮食品
  • 惣菜
  • 日用品
  • 衣料品
  • 住関連商品
  • 家庭用品

などを一つの店舗で購入できます。

そのため、顧客にとっては、

「食品スーパー」
+
「ディスカウントストア」
+
「ホームセンター的な機能」

を一つの店舗で利用できるような買い物が可能になります。

SC小売ラボ分析

地方では自動車で来店するケースが多いため、「一度の来店で買い物を完結できる」というワンストップ性が重要です。

食品だけを目的に来店しても、日用品や衣料品、住関連商品まで購入できます。

つまりトライアルは、

来店目的を1つに限定せず、複数の商品カテゴリーによって来店価値を高める

店舗モデルになっています。

AI・IoTによるローコスト運営が地方出店を支える

トライアルの特徴として、AI・IoTを店舗運営に積極的に組み込んでいる点も挙げられます。

同社は、リアル店舗の運営とリテールテックの開発を一体で推進しており、レジカートなどのIoT機器を店舗へ導入しています。

2025年6月期にはSkip Cartの導入店舗数が258店舗となっています。

出典:トライアルホールディングス「2025年6月期 業績ハイライト」
トライアルホールディングス「業績ハイライト」

また、2026年の浜北店では、レジカート120台、インストアサイネージ32台を導入予定と発表しています。

出典:トライアルホールディングス「メガセンタートライアル浜北店」
トライアルホールディングス「西友跡地に“次世代メガセンター”を静岡県初出店」

さらにトライアルは、Skip CartなどのIoTデバイス導入、機械化・効率化によって削減した人時を、より付加価値の高い作業へ振り向ける店舗運営を進めています。

出典:トライアルホールディングス「対処すべき課題」
トライアルホールディングス「対処すべき課題」

SC小売ラボ分析

地方では人口減少や労働力不足が店舗運営上の課題になりやすいため、

「店舗を大きくする一方で、運営を省力化する」

というモデルは地方出店との相性が良いと考えられます。

地域に合わせて商品構成を変える「標準化+地域対応」

全国チェーンであっても、地方では全国一律の品揃えだけでは十分ではありません。

トライアルは公式資料で、データ活用による顧客理解をもとにした商品展開に加え、地域の需要に応じた弁当・惣菜の開発を行っていると説明しています。

また、店舗改装においても、生鮮食品をはじめとする地域特性に合わせた品揃えを強化しています。

出典:トライアルホールディングス「ビジネスモデル」
トライアルホールディングス「ビジネスモデル」

出典:トライアルホールディングス「対処すべき課題」
トライアルホールディングス「対処すべき課題」

これは地方SCのリーシングにも参考になります。

全国チェーンとしての仕入れ力・PB・価格競争力を持ちながら、地域ごとの需要に合わせて商品を調整する。

つまり、

標準化 × 地域対応

を組み合わせていることがポイントです。

トライアルの出店戦略をSCの視点から分析する

ここまでの内容をSC・商業施設の視点から整理すると、トライアルの出店戦略は以下のようになります。

出店戦略 トライアルの特徴 SC小売ラボの分析
大型店 スーパーセンター・メガセンター 広域商圏を獲得
ロードサイド 大型店を展開 自動車商圏との相性が良い
居抜き 他社撤退跡地を活用 大型空床を再活用
ドミナント 地域に店舗を集中 物流・認知を効率化
ワンストップ 食品+衣・住 来店目的を増やせる
AI・IoT レジカート等 店舗運営を省力化
地域対応 地域需要に合わせた品揃え 地域密着性を高める
複数フォーマット SuC・メガセンター・smart等 物件条件への対応力を高める

トライアル公式資料では、複数の店舗フォーマットを持つことで、食品スーパー、家電・家具量販店、ホームセンター、アパレル店舗などの撤退跡地へ柔軟に居抜き出店できると説明しています。

出典:トライアルホールディングス「対処すべき課題」
トライアルホールディングス「対処すべき課題」

この点は、トライアルの出店戦略を理解するうえで非常に重要です。

トライアルは地方SC再生の「核テナント」になり得るか

トライアルの出店戦略からSC業界が注目すべきなのが、地方の大型空床への対応です。

例えば、地方SCで大型スーパーが撤退した場合、

大型店退店
↓
大型空床発生
↓
後継テナント探索
↓
テナントミックス再構築

という流れになります。

ここでトライアルのように、大型物件を居抜きで活用できる事業者が候補になる可能性があります。

実際、浜北店では西友跡地を活用し、売場面積を約1,000坪から約3,000坪へ拡張しています。

出典:トライアルホールディングス「メガセンタートライアル浜北店」
トライアルホールディングス「西友跡地に“次世代メガセンター”を静岡県初出店」

さらに2026年9月には、トライアルとスギ薬局が協業し、トライアル店舗内に調剤薬局を出店する取り組みも始まっています。

トライアル側は、調剤サービスによって「シニア・ファミリー層の利用機会拡大」や「来店頻度向上」を目指すと説明しています。

出典:トライアルホールディングス「トライアル×スギ薬局の戦略的協業」
トライアルホールディングス「トライアル×スギ薬局の戦略的協業」

これはトライアルが単なる「食品・日用品を販売する店舗」から、地域の生活機能を集約する方向へ進んでいることを示す事例の一つです。

SC小売ラボ分析

今後の地方SCでは、

大型核テナントの誘致
↓
食品・日用品の集客
↓
医療・サービス等の追加
↓
周辺専門店の再構築

というように、核テナントを起点としてSC全体を再設計するリーシングが重要になる可能性があります。

→ 食品スーパー併設型SC

結論|トライアルが地方で強い理由は「地方の生活構造」に合わせているから

トライアルが地方で強い理由を整理すると、次の5点が重要です。

  1. 大型スーパーセンターが地方の自動車商圏と相性が良い
  2. 食品+衣・住のワンストップMDによってまとめ買い需要を獲得できる
  3. 居抜き出店によって大型物件を活用できる
  4. ドミナント出店によって地域を面でカバーできる
  5. AI・IoTによって大型店舗の運営効率化を進めている

特に重要なのは、これらが単独で機能しているのではなく、

「商圏分析 × 店舗フォーマット × 物件取得 × 商品構成 × 物流 × IT」

が一体になっていることです。

トライアルは公式に、独自の商圏分析ソフト「Retail Map」を出退店の検討や既存店の業績改善に活用していると説明しています。

出典:トライアルホールディングス「対処すべき課題」
トライアルホールディングス「対処すべき課題」

この点からも、トライアルの出店は単純な「良い物件があったから出店する」というものではなく、商圏データを活用しながら店舗フォーマットと物件を組み合わせる戦略であることが分かります。

そしてSC小売ラボの視点で最も注目したいのは、**「居抜き×大型空床×核テナント」**という組み合わせです。

今後、地方SCで大型テナントの退店が増えた場合、

「空床をどう埋めるか」

だけではなく、

「トライアルのような大型核テナントを入れた場合、SC全体のテナントミックスをどう再構築するか」

という視点が重要になります。

トライアルの出店戦略は、地方SCにおける**「大型空床対策」と「SC再生」**を考えるうえで、今後も注目すべき事例の一つと言えるでしょう。

→ 郊外型SCと駅前SC

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